トークセッション『し乃美夜- SHINOBIYORU』(後半)

写真家 MIWAKATOH × パフォーマー・演出家 なかええみ

これから撮りたいもの

 

なかえ:今回、言葉がありました。美和さんの言葉。

 

MIWA:はい。

 

なかえ:「旬を決めるのは自分自身だ。」

 

MIWA:(笑)例えば、私は今30代ですけど、30代からしたら、高校生は「わぁ、超若くっていいなぁ」とか、「これから何でもできる」とか「道いっぱい選べる」とかって思うかもしれないけど、50代の方とかにお会いすると、「30代はこれからだよ、今が一番いいよ。」って言われるし。この間、92歳の方の誕生日に伺わせてもらった時に、その方が、第一声に「自分はまだまだ未熟者で子どもだ。」って仰ったんですね。それに、すごい打たれて、92歳でそういう風に言われると、私はもうミジンコレベルというか。(会場、笑い)

 

なかえ:まだ産まれてないね。

 

MIWA:そうそう。そういう感じだから、常に自分の気持ち次第で旬は創れるし、一回自分で、「今が旬だな」って思っても、また旬もあるし、逆に諦めちゃえば、どんどん腐っちゃうし、っていうことからあの言葉を。

 

なかえ:「全て叶えられる」っていう言葉もあったと思います。今後、どんなものが撮りたいのか。ありますか?

 

MIWA:とりあえず、これ、また海外とかでもやりたいなっていう希望もあるし、うーーん、やっぱり私はどうしても、すごい人が好きみたいで、もともとすごく人見知りだったんですけど。だから、手を撮り始めたのも、人の顔を撮るのが怖かったんです、今まで。「はい、チーズ」っていうと、こっちに視線が来るじゃないですか?今、すっごい見て頂いてますけど、昔の私は、それがすごく怖くって、見てほしくなかったんですね。だから、手とか、人の脚とか、注意をしなくっても撮れるものがすごく好きで、それをずっと撮っていたら、ああいう形になったんですけど。

でもやっぱり、海外旅行とか行くと、どうしても人が好きみたいで、それをこう、こっそり撮るんですね。だから、人の美しさみたいな、存在そのものの美しさを撮っていきたいと思います。

なかえ:おぉ、いいですね。期待したいです。(会場、拍手)

 

MIWA:ありがとうございます。

 

 

踏み込む怖さ。

 

なかえ:話がちょっと違う話に移りますけれども、今回ね、私たちの話もさせて頂きたいんです。

 

MIWA:はい。

 

なかえ:いつも私たちは美和さんに撮ってもらっているんですよね?ステージ写真を。

MIWA:そうそう。

 

なかえ:本当に良い写真を。ぐいぐいぐいぐい、この方、来るの。(会場、笑い)ぐいぐい来るんだよね?

 

MIWAすみません。

 

なかえ:「今?」っていうくらいのタイミングでもやって来ます。それこそ本当に、「しのびよる」ってタイトルですけど、、、全然忍び寄ってない。(会場、笑い)

 

MIWAすみません。

 

なかえ:(笑)そういうご縁で、今回こうやって、オファーをくださった、そのことを、ちょっとだけ、我々の話もして頂ければ幸いです。

 

MIWA:はい。分かりました。

ええと、カメラマン始めて、一番言われて嬉しかったことは、えみさんから言われた言葉なんですね。共通のお友達がいて、その方にご紹介して頂いて、「はじめまして」で撮影現場に行ったんです。で、それが本番だったんですね。

で、初対面の本番の時に、えみさんが、私のことを皆さんに紹介するする時に、「この人は、とにかく入ってくるから、気をつけて」って言われて。で、それがすごく嬉しかったんです。

 

なかえ:(会場、笑い)やめなさい、本当に(笑)。

 

MIWA:え?なんで?だって、カメラマン的にいうと、あの、やっぱりアーティストさんでいらっしゃるし、すごい世界観を創っている方に、踏み込むことってすごい恐いんですよ、実は。

 

なかえ:そうか。

 

MIWA:だから、いつも「ここまで入っていいのかな?行っちゃっていいのかな?」っていう葛藤があって。その葛藤って一番邪魔で、その葛藤は写真に写っちゃうから、先に「入る」っていうことを言ってくれたから、「入っていいんだ~!」って、さらに行っちゃった、というか。

 

なかえ:そういうことだったんだ。

 

MIWA:そういうことだったんです。

 

なかえ:かなり来るよね?(会場、笑い)

(「たぐる」より 撮影MIWAKATOH)

 

MIWA:それはなんか、私はその人の表面じゃなくって、中に入りたいって思っちゃう、何でも。その人の本質というか、勝手に思う本質だけど、私の感じるものを。その中に入りたいから、どうしても、写真撮ってると、もう、すーーって行っちゃうんです。
 
 
 
(「たぐる」より 撮影MIWAKATOH)
 
 

・・・ということで、本当に救われた気持ちがして、カメラマンとしてじゃなくて、人間として。私は、別に写真撮っているときじゃなくても中に入って行っちゃうから。興味があることとか、人とかに対して。すごい救われて、だから、一緒にやって頂けたら、またさらに、なんか、救われるんじゃないかなって思って。

 

なかえ:救われる、、、救いませんけど(会場、笑い)

 

MIWA:あはは。

そう思ってお声をかけさせて頂きました。

 

なかえ:ありがとうございます。

 

 

テーマ「祈り」。

 

なかえ今回、祈り、、、私もずっと祈りがテーマなんですね。私にとっては祈りと美はすごく近いんですね。祈る場には美がある。宗教的な建物も美しいし、飾ろうとする美しさ。

もちろん美っていう漢字の成り立ちですけども、美っていうのは、羊が大きいと書きます。あれは生贄という意味です。生贄は羊でした、昔。もちろん人間だったこともあったんですけど。羊が、まるまる太って(大)いるほうが、神にとっては喜ばしかったんですね。それが、可愛らしいもの、そして美しいものとして変えられて、昇華されていきました。

つまりその、美っていうものと、祈りっていうものが近くて、私は、美を探究している時に、なぜかずっと、祈りが入ってきてしまう、、その経験をずっとしながらも、やっぱり根源には「なんとか(したい)」っていう「何か」がある。

 美和さんに「神聖なんだよね、えみさんたちのうたは。」って、言ってもらって、今回は本当に快く、快くというか、待ってましたと言わんばかりに、やらせて頂きました。

そして、今回作った「曼荼羅の祈り旅」という歌ですが、美和さんの曼荼羅の「祈りの掌」を見て、インスピレーションを受けて、一緒に創った、と思ってます。

美は、先程言った、寄りたくないような美もあると思ってます。そんな中で、祈るにも、誰にも理解されない程の祈り、近づけない程の祈り姿っていうものもあると思うんですね。。恐い美、があるとともに、恐いくらいの祈りの姿があるんではないかと思っていて。私自身、恐いくらいの祈りに、自分が入ったことはないと思う。宗教の「宗(おおもと)」に向かう人たちの中に、自分が入れるか?、、きっと恐いと思う。身体をばーんと投げ捨てて、本当に祈れるかなって思う。

だけど、美和さんが言うように、私は、祈りは日常の生活の中にあると思ってる。恐いほどの祈りも。だから、日常の中にある美を、美和さんが見つけてくださって、私は美和さんの映像の中に、祈りをずうっと探してた。

 

MIWA:うん。

 

なかえ:うん。そういう風に、作品を創りました。

 

MIWA:ありがとうございます。
 

これから、そして、メッセージ。

 

なかえ:じゃあ、残すところあと2分、3分くらいあります。質問を、、質問って言ってもね、いきなりね、、

 

MIWA:言わなきゃいけない雰囲気、いやですね。はい、ちのくん。

 

男性:(今日はありがとうございました。

 

MIWA:ありがとうございます。

 

男性:素晴らしい映像、そしてあの、うたが本当にきれいで。

 

なかえ:ありがとうございます。

 

男性:前の方の席で、結構感動しながら、桟敷で座ってました。

お二人が今回創られた作品の、この「場」というものを先に創られたと思うんですけど、その中で、今お話されていたこと以外で、すごくこう、伝えたい、たった一個のメッセージがあるとすると、何ですか?

 

なかえ:お、、、(加藤に)どうして当てちゃったの?(会場、笑い)

 

男性:質問出した方がいいかなと思って。

 

なかえ:ありがとう(笑)。

 

MIWA:うーん。この映像作品、個展が決まる1ヶ月前を切ってるくらいに、いきなりオファーして、本当は、オープニングの時に創った、別のスライドショーがあったんですね。で、その、音は私が自分で創ったんですけど、それをえみさんにやってもらいたいなっていう話だったんですよ、最初。でも、歩いているうちに、「ええ~でも、ああいうニューヨークの雰囲気とか、えみさんの世界観と違う」って思って。

 

なかえ:あ、そうなの?(会場、笑い)

 

MIWA:そうなの。打合せで座ったときに、「本当はこうしようと思ってたんですけど、全く何もできてないし、何も撮ってないんですけど、違うのやりたい。」っていきなり言って。しかも「今から撮ります。全く資料何もないです。」って言ったのに、承諾してくださって。で、私の今の拙い話をもとに作曲してくださって。「そうきたなら、私はこの写真を!」みたいな感じで、この2週間くらいで撮って、創ったんですね。だから、不可能はないなぁっていうか、やるって決めたら絶対やれるんだなっていう、こと。

 

なかえ:私。

 

MIWA:そう!すっごい協力してくださって。

 

なかえ:私が、がんばったの。(会場、笑い)

 

MIWA:本当にそう、本当にそう。っていう感じです。

 

なかえ:ありがとうございます。(会場、拍手)

たった一つのことかどうか分からないけど、ちょっと整理されてないんですけど、こうやって今日、観に、聴きにきていらっしゃって、それで、自分が芸術体験をすること、、場に一緒にいるってことと、あともう一つ大切なことは、自分がするってことなんですね、行為として。うたうとか、うたうとか、、、(会場、笑い)、ね。

その時に、やっぱり、さっきも、参加型が「なんて素晴らしいんだ」って思ってるのは、能動的な美体験、自分が(芸術体験を)するってことが絶対に必要で。これからの時代、特に、、、ひとりびとりが、場を変えられる、ひとりびとりが、生きるってことを、、、、何て言うのかな、ひとりびとりが、いつも、「そこにいる」、ということを、、、「する(創る)」ことで体感する。

人は、他人によっては、絶対に癒されない。素晴らしい精神性を指導する人もいる、先生もいる、ヒーラーもいる。だけれども、最後には、自分の力でしか自分は癒されない。と思ってます。私のメッセージは、こんな感じで。(会場、拍手)

ありがとうございました。

 

MIWA:ありがとうございました。(会場、拍手)
 

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